【民法等の一部改正】父母の離婚後等の子の養育に関する見直しについて

更新日:2025年12月10日

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令和6年(2024年)5月に民法等の一部を改正する法律が成立しました。この法律は、父母が離婚した後もこどもの利益を確保することを 目的として、こどもを養育する親の責務を明確化するとともに、親権、養育費、親子交流などに関するルールを見直すもので、令和8年4月に施行されます。

詳しい内容については、法務省ホームページをご覧ください。

改正のポイント

親の責務に関するルールの明確化

父母が、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもを養育する責務を負うことなどが明確化されました。

今回の改正では、次のような親の責務が明確化されました。

こどもの人格の尊重

父母は、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもの心身の健全な発達を図るため、こどもを養育する責務を負います。

こどもの扶養

父母は、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもを扶養する責務を負います。

父母間の人格尊重・協力義務

父母は、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもの利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければなりません。

こどもの利益のための親権行使

親権は、こどもの利益のために行使しなければなりません。

親権に関するルールの見直し

父母の離婚後の親権者

父母の婚姻中は父母双方が親権者ですが、これまでの民法では、離婚後は、父母の一方のみを親権者と定めなければなりませんでした。
今回の改正により、離婚後は、共同親権の定めをすることも、単独親権の定めをすることもできるようになりました。

親権の行使方法(父母双方が親権者である場合)

父母双方が親権者である場合の親権の行使方法のルールが明確化されました。

  1. 親権は、父母が共同して行います。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他方が行います。
  2. 「監護教育に関する日常の行為をするとき」「こどもの利益のための急迫の事情があるとき」は、親権の単独行使ができます。
  3. 特定の事項について、家庭裁判所の手続で親権行使者を定めることができます。

※改正前は、1.のみが規定されており、2.と3.については規定がありませんでした。

監護教育に関する日常の行為

日々の生活の中で生じる監護教育に関する行為で、こどもに重大な影響を与えないものをいいます。

こどもの利益のため急迫の事情があるとき

父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては親権の行使が間に合わず、こどもの利益を害するおそれのある場合をいいます。急迫の事情があるときは、日常の行為にあたらないものについても、父母の一方が単独で親権を行うことができます。

親権行使者の指定

父母が共同して親権を行うべき特定の事項(例:急迫の事情があるとはいえない場面におけるこどもの転居や財産管理など)について、父母の意見が対立するときは、家庭裁判所が、父又は母の請求により、父母の一方を当該事項に係る親権行使者に指定することができます。

監護についての定め

父母の離婚後のこどもの監護に関するルールが明確化されました。

監護の分担

父母が離婚するときは、こどもの監護や分担についての定めをすることができます。

監護者の権限

離婚後の父母双方を親権者とした場合であっても、その一方を「監護者」と定めることで、こどもの監護をその一方に委ねることができます。

養育費の支払確保に向けた見直し

  • 養育費の取決めに基づく民事執行手続が容易になり、取決めの実効性が向上しました。
  • 法定養育費の請求権が新設されました。
  • 養育費に関する裁判手続の利便性が向上しました。
合意の実効性の向上

これまでの民法では、同居親と別居親の間で養育費の支払を取り決めていたとしても、別居親が養育費の支払を怠ったときに別居親の財産を差し押さえるためには、公正証書や調停調書、審判書などの「債務名義」が必要でした。

今回の改正により、養育費債権に「先取特権」と呼ばれる優先権が付与されるため、債務名義がなくても、養育費の取決めの際に父母間で作成した文書に基づいて、差押えの手続きを申し立てることができるようになりました。

法定養育費

これまでの民法では、父母の協議や家庭裁判所の手続により養育費の額を取り決めなければ、養育費を請求することができませんでした。

今回の改正により、離婚のときに養育費の取決めをしていなくても、離婚のときから引き続きこどもの監護を主として行う父母は、他方に対して、一定額の「法定養育費」を請求することができるようになります。また、法定養育費の支払がされないときは、差押えの手続きを申し立てることができます。

法定養育費は、あくまでも養育費の取決めをするまでの暫定的・補充的なものです。こどもの健やかな成長を支えるためには、父母の協議や家庭裁判所の手続により、各自の収入などを踏まえた適正な額の養育費の取決めをしていただくことが重要です。

裁判手続の利便性向上

養育費に関する裁判手続では、各自の収入を基礎として、養育費の額を算定することとなります。そこで、今回の改正では、手続をスムーズに進めるために、家庭裁判所が、当事者に対して収入情報の開示を命じることができることとしています。

安全・安心な親子交流の実現に向けた見直し

  • 家庭裁判所の手続中に親子交流を試行的に行うこと(試行的実施)に関する制度が設けられました。
  • 婚姻中の父母が別居している場面の親子交流のルールが明確化されました。
  • 父母以外の親族(祖父母等)とこどもとの交流に関するルールが設けられました。
親子交流の試行的実施

家庭裁判所は、調停・裁判において、こどもの利益を最優先に考慮して親子交流の定めをします。その際には、適切な親子交流を実現するため、資料を収集して調査をしたり、父母との間で様々な調整をします。こうした調査や調整に当たっては、手続中に親子交流を試行的に実施し、その状況や結果を把握することが望ましい場合があります。そこで、今回の改正では、親子交流の試行的実施に関する制度を設けました。

婚姻中別居の場合の親子交流

父母が婚姻中に、様々な理由により、こどもと別居することがありますが、これまではそのような場合の親子交流に関する規定がありませんでした。そこで、今回の改正では婚姻中別居の場合の親子交流について、ルールを明らかにしました。

父母以外の親族とこどもの交流

これまで民法には父母以外の親族(例えば、祖父母等)とこどもとの交流に関する規定はありませんでした。しかし、例えば、祖父母等とこどもとの間に親子関係に準ずるような親密な関係があったような場合には、父母の離婚後も、交流を継続することがこどもにとって望ましい場合があります。そこで、今回の改正では、こどもの利益のため特に必要があるときは、家庭裁判所は、父母以外の親族とこどもとの交流を実施するよう定めることができることとしました。

財産分与に関するルールの見直し

  • 財産分与の請求期間が2年から5年に伸長されました。
  • 財産分与において考慮すべき要素が明確化されました。
  • 財産分与に関する裁判手続の利便性が向上しました。
財産分与の請求期間

財産分与は、夫婦が婚姻中に共に築いた財産を、離婚の際にそれぞれ分け合う制度です。財産分与は、まずは夫婦の協議によって決めますが、協議が成立しない場合は、家庭裁判所に対して財産分与の請求をすることができます。

これまで、この財産分与の請求をすることができる期間が、離婚後2年に制限されていましたが、今回の改正により、離婚後5年を経過するまで請求できるようになりました。

財産分与の考慮要素

これまで民法では、財産分与に当たってどのような事情を考慮すべきかが、明確に規定されていませんでした。そこで、今回の改正では、財産分与の目的が各自の財産上の衡平を図ることであることを明らかにした上で、「婚姻中に取得又は維持した財産の額」などの考慮要素を例示しました。

裁判手続の利便性向上

財産分与に関する裁判手続では、分与の対象となる財産の種類や金額を明らかにする必要があります。そこで、今回の改正では、手続をスムーズに進めるために、家庭裁判所が、当事者に対して財産情報の開示を命じることができることとしました。

養子縁組に関するルールの見直し

  • 養子縁組がされた後に、誰が親権者になるかが明確化されました。
  • 養子縁組についての父母の意見対立を調整する裁判手続が新設されました。
養子縁組後の親権者

未成年のこどもが養子になった場合には、養親がそのこどもの親権者となり、実親は親権を失います。

離婚した実父母の一方の再婚相手を養親とする養子縁組(いわゆる連れ子養子)の場合には、養親(再婚相手)とその配偶者である実親が親権者となります。この場合には実父母の離婚後に共同親権の定めをしていたとしても、他方の親権者は親権を失います。

養子縁組についての父母の意見調整の手続

15歳未満のこどもが養子縁組をするときは、そのこどもの親権者が養子縁組の手続を行う必要があります。これまでの民法では、父母双方が親権者であるときに、その意見対立を調整するための規定がなく、父母の意見が一致しなければ養子縁組をすることができませんでした。

今回の改正では、養子縁組の手続に関する父母の意見対立を家庭裁判所が調整するための手続を新設しました。

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