主郭地区の発掘調査

第1次発掘調査は、主郭（曲輪001）、主郭下の曲輪051、曲輪002についてAからD区の4調査区で実施した。
主郭（曲輪001）北端に設定したA区では、曲輪面に0.7メートルの段差があることを確認したが、建物等の遺構は確認されなかった。
主郭下の北西から西側法面に設定したB区・C区では主郭を廻る斜面に一連の石垣を確認した。C区で確認された石垣は残存しているもので2から3段積みで石垣高は2メートルあった。主郭西側の一段下に配置された曲輪002に設定したD区では、表土下約5センチメートルで曲輪面に至り、礎石の可能性がある平坦な石を2個確認したが、他に遺構は確認できなかった。

第2次発掘調査は、主郭（曲輪001）の北東側、西側、南東側の各斜面と、主郭東側下の曲輪021についてEからH区の4調査区で実施した。主郭北東斜面に設定したE区では上下2段に築かれた石垣を確認した。
主郭西側斜面に設定したF区では現在園路となっている部分から石垣の基底部を検出したことにより、築城時にはこの部分が通路ではなかったことが判明した。主郭南東斜面に設定したG区では上下2段の切り立てられた岩盤を確認し、一部では石垣を確認した。これまで岩盤の切り立ては石垣の代替構築物と考えられていたが、この調査により石垣を伴わない岩盤の前面にも石垣が積まれていた可能性が強くなった。過去の試掘調査の成果を合わせるとこの箇所では3段の段築状の石垣が築かれていたことが判明した。主郭東側の一段下に配置された曲輪021に設定したH区では南西（山側）から北東（谷側）へ下がる曲輪面を確認した。曲輪面は造成土によって整えられ、礎石の可能性がある扁平な石1個を検出した。

I区

上段石垣の控え、裏込石層の規模、構造、主郭曲輪を構築するために大規模な版築積土を確認しました。石垣の平面プランが北西に張り出すような形状をしていることから、櫓などの特殊防御施設に伴う築造である可能性が考えられます。石垣面石に岩崎山（小牧山の北東約3キロメートルにある標高54メートル程の山）産出と考えられる花崗岩2石を確認し、うち1石には背面に刻印がありました。
また、上段の石垣に並行して連なる下段の石垣を確認しました。下段の石垣は昨年度調査E区で確認した下段の石垣から、今年度調査のK区、J区を経由しI区に続くと考えられ、上下段の石垣の間は通路である可能性がでてきました。

J区

従来露頭していた上段石垣周囲の堆積土等を除き、上段石垣・石垣控え・裏込石層・版築積土・主郭造成面の構造を確認しました。I区同様の山本来の地山から大規模に版築状の積土を用いて主郭曲輪の平坦面と端部を形成していることが判明しました。また、転落等により原位置を留めない石垣面石等2石について移設し、重量、背面、底面の状況を確認しました。また、I区同様、下段石垣を確認し、下段の石垣が地山を削平した上に、石垣面石を据え、裏込石を充填する構造であることがわかりました。
上段石垣背後の裏込石層の上層から、原位置をとどめない状態で、「佐久間」という墨書のある石垣石材が出土しました。

K区

従来露頭していた上段石垣周囲の堆積土を除去し、石垣の背後の状況を確認しました。上段石垣の根石付近の石垣は間詰石も含めて非常に良好な状態で残存しており、織豊系城郭初期段階の石垣構築技術を知る貴重な資料となりました。北端尾根沿いに、他と比べて広い平坦面があり、端部に3段目となる石垣が構築されていることを新たに確認しました。この平坦面はテラス状の曲輪で城の北方を展望し、防御するための縄張り構造を有することがわかりました。